紳士とは何だろう
日本における紳士のイメージとは
日本における紳士のイメージは、英国での紳士のイメージの延長線上にあると言ってもよいでしょう。
そもそも明治以降に、ヨーロッパの文化や習慣が日本に入ってくるようになった状況で「日本風の紳士」のイメージが形成されていった経緯があるからです。
まず知っておく必要があるのは、もともと「紳士」とは英語の「Gentleman」の訳語であることです。
そしてこの英語の「ジェントルマン」は、もともと英国において上流階級に位置する「Gentry(ジェントリ)」を語源としています。
日本でも、もともと身分の高い男性に対して「紳士」が使われていました。
ですから、日本・英国ともにある程度「高貴な身分」であることが紳士のイメージの土台にあるわけです。
しかし現在では社会階級や身分が定義になることはほとんどなく、もっぱら「上品な振る舞い、マナーや礼儀を心得ている人」に対して使われるようになっています。
英語で「穏やか」「温和な」「寛大な」を意味する「Gentle」という言葉がありますが、まさにこの言葉の意味に近いでしょう。
つまり単にマナーをわきまえているだけでなく、落ち着きがあってどんな状況にも動じず、また滅多な言葉は起こったり声を荒げたりしない人物が「紳士」として評価されるわけです。
見た目の上品さや振る舞い、そして内面の充実度の両方が備わって初めて紳士になると言えるでしょう。
普段は上品に振る舞っていても、ちょっと自分の意に沿わない状況になるとたちまち機嫌を悪くしてしまうような男性は、紳士ではないどころか「見掛け倒しの男性」としてマイナス評価を受けてしまう可能性もあります。
英国での紳士のイメージとは?
このように、もともと日本の紳士のイメージは英国と共通している部分が多いのですが、英国の場合は日本よりも階級社会が残っていることもあり、ある程度身分の高さが紳士の条件として求められる面もあるようです。
例えば英国では、どんな新聞を読んでいるかによって社会階層がわかる面があるとも言われています。
大衆紙ではなく高級紙を読んでいる男性の方が、「より紳士に近い」と見なされるのです。
また日本と同じように穏やかで物事に動じない面が重視される一方、フェアプレーの精神やユーモアのセンス、冒険心なども求められる傾向があります。
とくにユーモアのセンスは、日本人の紳士にはなかなか見られない特徴でしょう。
服装に関しても、単に高級なだけでなく、ダンディズムと洒落っ気、そして遊び心を感じさせるファッションセンスの持ち主が紳士として愛される傾向があるようです。
階級社会でその人の表面的な面が求められる一方で、こうした内面の充実度が日本以上に求められているとも言えるかもしれません。